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【ニュースレター】全国初! 港町を走るグリスロ潮待ちタクシー
「緑ナンバー」は全国初への挑戦の証
「運行中のドライバーが地元の皆さんとすれ違うたびに、『こんにちは。暑いですねぇ』などと気軽に声をかける。すると観光にいらした乗客の皆さんも、つられて『こんにちは』と挨拶してくれたりするんです。解放感があって、ゆっくりのんびり走るグリスロならではの光景です」
こう話すのは、広島県福山市でアサヒタクシー(株)を経営する山田康文社長。今年4月、全国で初めてグリーンスローモビリティ(時速20キロ以下で走行する定員4人以上の電気自動車)を用いたタクシーの事業化を実現し、その運用現場の様子を楽しそうに話してくれました。
昨年秋に実施された実証実験から導入まで、わずか4か月。全国初のチャレンジだけにクリアしなければならない課題も山積みだったそうですが、「国交省や中国運輸局、福山市等からの力強い支援によってスピーディな実現が可能となった。車両に装着された緑ナンバーは、その証です」と、あらためて関係者に感謝の意を表しました。
注目は全国規模。首都圏や九州から視察団が多数訪れる
行政との連携で活用の拡大を目指す
「グリスロ潮待ちタクシー」と名付けられたタクシーが運行する同市・鞆の浦地区は、昨年5月に日本遺産にも認定された港町。人気アニメ映画のモデル地として注目を集めたことや、古い町並み、貴重な歴史遺産が点在することから年々観光客が増えています。その一方で、およそ4,000人の住民のうち半数弱が65歳以上と、急速な高齢化は地域の大きな課題。山田社長がグリスロに注目したのもこの視点でした。
「私の祖母はこの地区の出身で、山の中腹に住んでいました。急な坂道をしんどそうに登っている姿を、私は小さい頃から見てきました。その光景が発想の原点。ですから、一般のタクシーが乗り入れできないその狭い坂をぐんぐん登るヤマハの車両を見て、感無量でした」
運賃は地域の小型タクシーと同じ初乗り630円。鞆の浦地区内限定の運行で、週末には1日で5〜10件ほど稼働しているそうです。また、高齢者の利用を念頭に電話による配車依頼にも積極的に対応するほか、フェリー乗場など観光拠点にも配置するなど、地域住民と観光客の両方に対して認知を進めながら定着を目指しています。
「とは言え、まだ理想とはほど遠い。1回の乗車で200円。みんなで乗り合いができてこそグリスロの持ち味が出ると考えています」と、山田社長。「貨客混載、他の交通と連携した観光遊覧、団地とバス停のつなぎ役など、アイデアはまだまだたくさんあります。それらを行政等と連携して一つひとつ実現していきたい。この町を良くしたい」という思いを原動力に、すでに2台目の導入を検討しているそうです。
「町を良くしたい」とアサヒタクシー(株)の山田社長
前例のないグリスロタクシーの事業化にあたり、山田社長が各方面に行ったさまざまなアプローチを一つひとつお伺いしました。「全国に同じ課題を抱えた地域はたくさんある。そのモデルを鞆の浦で実現したい」。その情熱が、実証実験からわずか4か月のスピード導入を実現させたのだとあらためて感じました。もうすぐ夏休み。この夏は鞆の浦でゆっくり・とことこ史跡巡りなどいかがでしょうか? (広報グループ: 畠山 貴之) |